今日は,お気に入りのCube-Dというデジタル回路の教育キットをご紹介します.
一見すると,昔,僕も遊んだ学研の電子ブロックにそっくりなんですが,電子ブロックのいいところを継承して,ちゃんと最新の技術が取り入れられているというおもしろい教材です.
まず,根本的に何が違うかというと,Cube-Dは回路ではありません.こう言ってしまうと誤解を招いてしまいそうですが,回路というのは字のごとく電気がぐるっと一周するから回路です.電子回路を作るときは必ずぐるっと回るように作らなければ動きません.たとえば,小学校の時にやった豆電球を乾電池でつけるときを思い出してください.乾電池から出て行った線が豆電球やスイッチを通って,乾電池に戻ってきています.
家庭のコンセントだって,ちゃんと2本の線でできていますよね.あれは交流だから電気が流れる方向は瞬間で変化しますけれど,片方の端子から電気機器に入って,もう片方の端子から出て行ってます.最終的に反対側には発電機がある.
電子回路は電線で一周させない動かないわけですが,これが電子ブロックで回路を作る時にやけに難しくなる原因です.戻ってくる線もブロックで作らなければならない.電子ブロックの反対側の思想で,エルキットというのがあって,これは抵抗とかの部品がボードにくっついていて,電線を繋いで回路を作るというものでした.こっちはもう電線がぐちゃぐちゃして,動かなかった時はどこが間違ったのかとかさっぱりわからないものでした.電子ブロックはぱっと見ればわかるのですが,決められた面積の中でブロックの結線だけで回路を作らなければならないですから,エルキットよりも簡単な回路しか組めなかったように思います.
どちらも,半田付けをしない電子回路教材ということで大変お世話になったのですが.コンピュータでなんでもやれるような時代をへて,改めて電子ブロックに戻ってみると,回路の持っている一周しなきゃないという制約はなんとかならんのかなぁと思ったものでした.
で,このCube-Dは1周しません.コンピュータの用語でいうとデータフローです.データフロー型ビジュアルプログラミング言語というのがありますが,それと同じです.
でもデジタル回路で考えると当たり前なんですよね.デジタル素子を繋いでデジタル回路を作るとき,素子と素子を繋いでいる小さい範囲ではちゃんと回路として一周するようになっているのですが,重要なのは素子の間で伝えている情報であって,情報は回路のように一周せずに,一方通行で流れてゆきます.
最初に例をお見せします.
これは,乱数を発生させるブロックがあって,その信号を2つに分岐して,2つのデジタル表示器で表示させているところです.同じ数字が表示されてますよね.乱数はどんどん変化するので表示されている数字も変わってゆきます.
まず,電子ブロックにもありましたが,ただ線を繋ぐだけのブロックですが,
これが裏側を見ると本当にただの線です.
仕組みはこんな感じです.基盤にはたくさん接点がありますね.ブロックの裏側にもバネがいっぱいついています.
使う人からみると,電子ブロックと同じように,ブロックには上下左右の4つの端子があって,それが隣のブロックとつながっていると思ってていいのですが,電源の+とーとクロックをどの向きに挿しても繋がるようにしているのだそうです.
線を繋ぐ以外のブロックは,ほとんどがマルチブロックというものです.これが実に今風.この中に全ての機能があらかじめ入れてあって,機能として動くかを設定で切り替えるというものです.で,外からの見た目ではどんな設定になっているかわからないので,
このようなシールがついてきます.これを貼って使います.
マルチブロックはある程度の数がついてくるのですが,それぞれの実験ごとに好きな設定にできるので,本当に変な実験ができて楽しいですよ.
びっくりしたのが,マルチブロックにL型とR型の区別があって,
このように,2本の足の斜めのつき方が違うものなんですが.最初なぜこの区別が必要か全然わかりませんでした.基盤には穴が4つあって,そのうちの2つの穴を使って差し込むのですが,どちらも問題なく差し込めるので.で,普通に作っているうちは違いを意識する必要はありません.
では,なぜ必要なのかというと,
このブロックは反対側からも刺せるのでした.表に刺さっているブロックと足が干渉したら違う足のやつを使う.これは思いつかないわー.さすが,基盤で回路を作っている世界では常識なんでしょうかね.
もっと不思議なことは色々とありますよ.
デジタル回路だからANDとかORがあるのは当たり前ですけれども,+ とか < とかって,足し算とか数の大小ですよ.
昔,アナログコンピュータといって電圧の足し算ができる素子を組み合わせる計算機があったのですが.これ,本当に入力に2Vと3Vとの電圧をかけると,出力に5Vが出てくるというものだったのですが.それに似てますよね.Cube-Dは8ビットの整数の計算をします.
で,最初の写真を思い出してください.
ただの電線ですが,ここを8ビットの信号が通るんですよ.
さて,これで何ができるのか.
僕は5月の教育ITソリューションExpoでこの製品を知って,即Amazonから前のバージョンを購入したのですが,もう売り切れてしまったみたいですね.
と思ったら,クラウドファンディングを始めていました.
僕が興味をもっているのは,ブロックマイコンプログラムソース付きというやつで,これはそそりますよ.自分の好きなビジュアルプログラミング言語を設計できるってことですからね.
似たものにlittleBitsというのがありましたけど.これは僕は全然そそらなかったんですが.やっぱり,Cube-Dはビスケットの思想と似ているからなんでしょうね.