子供にとっての理想のコンピュータの入力

いつもはソフトウェアの話ですが今回はハードウェアの話を書きます.ここでいう子供というのは小学生のことです.

まず,子供たちにキーボードを使わせるということに僕は反対です.

わかりやすくするために話を4つに分けます.

1)人間にとって理想のコンピュータの入力

2)日本人にとっての理想のコンピュータ入力

3)現実とのギャップからどうやって理想に近づけるか

4)子供の教育をどうするか

子供にキーボードを触らせるということは,1)から3)の議論をすっ飛ばしてます.未来永劫,今のコンピュータの形が変わらないのだったらそれでもいいのですが,僕はコンピュータをより良くしようと考えている研究者なので,形が変わらないという説は受け入れられません.

まず1)人間にとって理想のコンピュータの入力です.

最近,音声認識の精度があがり,入力はそれでいいんじゃないか,という説もありますが.短い時間に限定するならよいでしょうが,声で長時間は疲れます.個室ならともかく人がたくさんいる場所でも難しいです.やはり手で入力する方式は必要です.僕は,こうしてキーボードから文章を書いていますが,あたまからすらっと文がでてきません.ちょっと書いては少し戻って,修正してという感じで,行ったり来たりしながら文章ができていきます.音声だけで一発で美しい文を話せる人ならよいですが,僕はそうではありません.音声だけで行ったり来たりの編集はできないので,僕的には音声での文書作成はありえません.

コンピュータ(タイプライター)が登場する前は人間はペンや鉛筆で文字を書いていました.片手です.片手だけで入力できるというのは,いろいろな姿勢で使うことができるので,重要な条件です.逆にキーボードからの入力だけが両手を必要として,それによって姿勢を強制され,机のスペースも広くとってしまってます.両手で押せるキーの数がアルファベットの数ぐらいだったので両手のキーボードが幅を利かせてますが,その後のソフトウェアの工夫により片手のキーボードでも同じ効率で入力できるというのがあります.日本語でいろんな予測をするのと同じ技術です.一つのキーに二つの文字を割り当てて,押したときにどっちの文字なのかは辞書などから自動的に判定するというものです.残念ながらあまり流行っていません.世の中,新しくよい技術が必ずしも流行るわけではないのですが,理想がどうであって,それを達成できる技術があるということは知っておいたほうがよいでしょう.

2)日本人にとっての理想のコンピュータ入力はどうあるべきでしょうか.日本語は漢字とかなが混ざり,ときどきアルファベットも使うという,表現力が豊かな言語です.昔の日本語タイプライターは全部の文字がずらっと並んでいたもので,ひとつずつ文字を探して打ち込んでいました.いま主流になっていて,僕もつかっている方法は,ローマ字かな変換から漢字変換という2段階の変換です.これがとてもイライラさせられるもので.いくら速いとはいえ,思考をとても阻害されます.もう一つ僕は,スマホでの入力で手描き文字認識をつかっています.まだ不満なところはありますが,文字認識技術はちゃんと新しくなっていて,ひらがな,漢字がまざった入力ができて,わからない漢字はひらがなで書けばよいし,思考に素直で快適です.速度としてはキーボードからのローマ字入力には叶いませんが,書いていて直接その文字を入力している感はなかなかいいですよ.

タブレットになってから,手描き文字入力ソフトは格段に面白くなりました.いままでだと,書いた文字の文字レベルの候補がでるだけですが,最近では文字レベルの候補の他に,単語レベルの候補も出ます.こちらは普通に使われている予測入力ですね.書いた文字の周辺にいろんな候補のボタンが登場します.ボタンを押すと候補がさらに精度が上がっていきます.こういうこともキーボードに手を固定してしまっている入力ではなかなかできないことです..

まだ改良の余地があると思うのは,漢字の部首による予測までは行っていないということです.これができれば手書きをはるかに超える速度で入力できると思います.いまは,漢字を全部かききるか,ひらがなでいれるかしかないのですが.ここに機械学習が導入され,いろんなレイヤーが混在した予測ができるようになればかなり快適になると思ってます.

タブレットの普及は,これまでキーボードで虐げられてきた日本人がやっと,日本人のためのコンピュータを考えられるようになったという意味で,とても大きいと思ってます.いろんな研究が進むことを期待しています.

3)現実のギャップとですが.僕はいまだにこういう長い文章を書くには机に向かって両手でキーボードで入力するほうが速いのですが,スマホレベルでそれを超える速度に達した時,ぼくは両手で文章を書くのをやめると思います.もちろん,プログラムを書くのはまた別なので両手のキーボードは使い続けると思いますが,こういうブログはスマホで書くようになるでしょう.隙間時間に書くものですから.タブレットやスマホというあたらしいスタイルのコンピュータが登場したことで,長い間のキーボードの呪縛から解放されるのです.

4)子供の教育をどうするか.まず,スマホレベルで高速に入力できるソフトウェアを開発するのが急務です.子供に与えるのはスマホサイズなのかタブレットなのかは議論が分かれるところですが,ぼくはiPad miniくらいがちょうどいいように思います.机に置くのにもそれほど邪魔にならないし,情報提示時もちゃんできるし,先のどのリッチな文字入力で候補をたくさん表示させることができますから.

学年別の文字認識エンジンが良いと思います.それぞれの学年で習う漢字は変わりますから,その漢字までを認識できるような辞書が入っています.候補の言葉も語彙力で変わってくるでしょう.難しい漢字が絶対に入力できないとするよりも,全ての画数をちゃんと書けば認識はするけれども,「さんずい」を書いた時の候補はその学年の漢字だけとか,まあいろいろとバリエーションは考えられるでしょう.その辺は教育を考えて微調整して行けばよい.

という議論があった上で,再度,子供にキーボードを教えるということの意味を考えてみるべきかと思います.とはいえ,子供は次々成長してゆくので,よい入力アプリを作るのは急務なことは確かです.

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