プログラミングを教育として見ない

昔のコンピュータは,黒い画面にキーボードで動かしていました.メールもできたし,文章を書いたり,いろんな計算をさせてました.ところが,まったく違う考え方のマウス・ウインドウで操作するコンピュータが登場します.これはそれまでのコンピュータの延長線上(キーボードの操作をマウスで簡単に指令する)ではありませんでした.コンピュータを使うということを原点に立ち返って考え,全く違くデザインし直したのでした.その結果,それまでコンピュータを使わなかった人たちにまで普及するようになりました.それでもコンピュータが簡単になったと言っても,プロの人たちのやり方,黒い画面にキーボードがなくなったりはしません.これはこれで,コンピュータを細かく正確に制御するためには必要なのでした.取って代わったのではなくて,新しく増えたということです.

OSだけでなく,様々なアプリも同じ発展をしています.ワープロの文字飾りも,整列した図形も,昔は文字で命令していましたし,今でもHTMLやマニュアルの自動生成などに残ってます.

本当はプログラミング言語も地味ですが同じ発展をしています.ビスケットの前身のKIDSIM(1995)は書き換えルールによって絵を動かすプログラミング言語です.VisuLanとかAgentSheetといったものもありました.ビスケットはそれらを正統に進化させた言語です.研究が進んでいない頃は,そのやり方ではおもちゃのプログラムしか組めない,と思われていましたが,いろんな発見があり,最初の想像以上に複雑なプログラムが作れることがわかってきました.

これらの言語を使うと,難しいことを覚えなくても,プログラミングの良さを獲得できます.良さというのはいろいろありますが,思い通りに,自動的に,正確に,高速に,何度でも動いてくれるといったことでしょうか.難しいこと(変数,繰り返し,条件分岐,関数....など)を覚えないでも,プログラミングの良さが得られれらばこんなに素晴らしいことはないですよね.

ここで厄介なのが「教育」という言葉です.何かを教えなきゃない感じです.教えなきゃないと考えるから,難しいままのプログラミングから抜け出せないし,それを教える理由を無理やりこじつけなきゃなくなるのです.さらに教育だけが一人歩きして,教えることが重要で,プログラミングができることの嬉しさはほとんど考慮されていない,中途半端なプログラミングが広まってきています.

新しい考え方のプログラミング言語を使いましょう.プログラミングの教育はほとんどいりません.せいぜいマウスクリックの練習をしたのと同じようなレベルです.

それよりも,プログラミングで何ができるか,をもっと広めて行きましょう.その視点ではビスケットでは足りない部分がまだ相当残ってますよ.

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