デジタルによるものづくりを超えた部分

日本の公教育では,デジタルによるものづくりが不当に低い地位に追いやられています.音楽や図工だけじゃなくて,ワープロを使わない作文とか普通の社会人からすると信じられないですよね.

その全く理解されていない中で,追い討ちをかけるようにプログラミングがやって来ました.プログラミングも見方によってはデジタルによるものづくりですが,どうやらこれまでと違って無視できない存在っぽい,というところまでは知られて来たようで,世の中が少し動き出した感じですね.

デジタルによるものづくりとプログラミングとは何が違うのでしょうか?

その前にまず,デジタルによるものづくりは,デジタルじゃないものづくりと比べて何が違うのか.コピー・貼り付け,保存,UNDOといった編集の魔法が非常に簡単にできて,材料費もかからない,といったところでしょうか.ここにインターネットがかかってくると今度は共有や共同制作が簡単になって,とてつもない可能性が眠ってます.こうなってくると,どんなものづくりも,わざわざ一旦デジタルを経由した方が便利ってことにもなってきますよね.

プログラミングももちろんデジタルによるものづくりの一つですから,上のような性質はあります.しかし,実はそれが吹っ飛ぶくらいもっとずっと重要な性質がプログラミングにはあるのです.ちなみに,ビスケットでコピー・貼り付けといった編集上の魔法を積極的に取り込んでいない理由もそこにあります.

プログラミングのずっと重要な性質を一言でいうと,1レベル上のことを考えられるようになる,ということです.

たとえば,作曲をするには楽器を使います.アプリを使えば,楽譜に相当する部分もデジタル化されるので,とても簡単に曲を作ることができます.

では,プログラミングで作曲するとどうなるでしょう.曲を自動的に生成するプログラムを作るということですから,これは自分にとっていい曲・いい音楽とは何かを考えることになります.生成される曲を聞いて,物足りなければプログラムを修正し,繰り返すことで理想に近づいてゆきます.出来上がったプログラムは自分が考える音楽に対する考え・アイデアが詰まったものになるはずです.これ,実際にプログラミングでやるとなると難しそうな話ですが,実際に僕がビスケットで遊んでいることの一つです.ビスケットで表現できる範囲に限定されますけど,ずっと聞いてても飽きない作曲マシンは作れます.プログラミング言語が簡単になったので,現実的になったということでもあります.

もっと大きな話だと,映画は一つの完璧なストーリを観客に提示するものなのに対して,テレビゲームはプレイヤーごとに異なったストーリを提示します.映画だと良いストーリを一つ考えるのに対して,テレビゲームは良いストーリーとはどういうものかを考えてプログラムで表現するということになります.

つまり,プログラミングでものを作るということは,対象の具体例を作るのとは違い,一つ上のレベルの性質について考えるということになるのです.この違いはとても大きいのですが,なかなかプログラミングを知らない人に伝えるのが難しいことでもありますね.

つくばで情報オリンピック世界大会が開催されます.そのプレイベントで子供たちにビスケットのワークショップを実施することになりました.プログラミングの世界イベントにふさわしい内容ということで,プログラミングが持っている一つ上の視点を意識した内容を考えてみました.

https://jp.ioi2018.jp/play-event/

実施日:8月30日(木)
場所:Biviつくば (茨城県つくば市吾妻1丁目8−10)
つくば総合インフォメーションセンター交流サロン(http://www.city.tsukuba.lg.jp/shisetsu/bunkagakushu/1002782.html

定員:各回20名

A:10:00~11:30 (小学校低学年)
きれいな動くもようをつくろう.コンピュータはせいかくにくりかえして動くのがとくいだよ.だけど,きれいなもようを考えるのは君しだい.

B:13:00~14:30 (小学校中学年)
プログラミングで作曲しよう.君の考えるいい音楽はどんなもの?君が曲を作るんじゃないよ.曲を作る機械を作るんだよ.

C:15:00~16:30 (小学校高学年)
パズルゲームを作ろう.作ったパズルを友達に遊んでもらおう.どこを改良したらもっと面白くなるかな?プログラミングだから改良も簡単だね.

料金:1,000円/回

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