プログラミングの可能性を伝える

ビスケットは「プログラミングの可能性と楽しさを万人に伝える」ことを目標に開発されてきました.「楽しさ」を伝えることに関しては,すでにいろんなツールがありますよね.それはそんなに難しくないです.難しいのは「可能性」の方です.

「プログラミングの可能性」というのはどういうことでしょう.一言で言うとなんでもできそうと思えるかどうかですね.スクラッチとか他のツールと比べたら,ビスケットは本当に何にもできそうにないですよね.ビスケットはむしろ可能性を伝えるのは捨ててるんじゃないか,と思われるかもしれません.

ビスケットは最初のバージョンから,実際に子供に使ってもらったものだけで,今回ので6つ目のバージョンになります.重要なのはバージョンが進むにつれて機能が少しずつ削られてきているということなんです.普通のアプリだと逆ですよね.機能が増えるはずです.

機能が削られてきた理由は,「プログラミングの可能性」をどうやって子供に伝えるかということなんです.

一例をあげます.

前のバージョンのビスケットでは,時計機能がありました.これはメガネの動作速度を変えることができます.大きな時計は1つ2倍で2つ入っているので,このメガネは4倍の時間で動きます.つまり魚はゆっくり前に進むということになります.魚が進むのだと,メガネの中の絵のずれを小さくすることでもゆっくりにできますが,たとえばミサイルをときどき発車するようなプログラムにはこのメガネは重宝していました.

ところが,今のバージョンには時計がありません.じゃあ,ゆっくりうごくメガネはどうやって作ったら良いでしょうか.

こうやります.上のメガネは魚の後ろに青い点を生成しています.下のメガネには魚の後ろに青い点が3つ重なっています.点が3つ重なっていた時に点が消えて魚が前に進みます.これで4回に1回前に進むメガネができました.

実際に,この時間をゆっくりにするテクニックは,多くの子供が自分で発見して様々な作品に使われています.自分で作れるなら,あえて機能を増やさなくても良いですよね.さらに,組み合わせで機能が作れると,もっと面白い表現もできるようになります.

この例は,2つ目に新しいメガネ「魚は同じ場所で何もしない」のが追加されています.1つ目のメガネと2つ目のメガネは同じ条件ですからどちらが動くかはランダムになります.つまり,1/2の確率で点が増えます.4ステップで動くのは3回連続で点が増えた時なので1/8,5ステップで動くのは3/16,6ステップで動くのは...(これであってますよね)という,ちょっと変わった分布のランダムな動き方ができるようになります.ここまでくると前のバージョンの時計よりもずっと表現力が増してますよね.

まず,一見,非力なところからスタートします.その範囲を十分使いこなす時間を与えながら,少しずつ「タッチ」「音」などできることを増やしてゆきます.ここまでで,大体1時間〜2時間.その先はこれまで教えた色々な技を組み合わせるだけで,できることが増えてゆくことを示してゆきます.そのとき,子供達はどう感じるでしょう.これが「プログラミングの可能性」を伝えることだと思っています.

もちろん,他のツールでも「プログラミングの可能性」を伝えることは可能でしょうけど,こちらが提示した機能を十分使いこなした上でのことなので,ビスケットのように短時間では難しいのではないでしょうか.

ビスケットで,どれくらいすごいものが作れるのか.これについては,2回のコンテストに応募された作品集が参考になると思います.https://www.viscuit.com/contestapplication/
メガネも見れるようになってますので,ぜひ見てみてください(これらのアプリは有料です).

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