総務省の補正予算「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」に我々が採択されました.
審査の観点のところで「我が国発のプログラミング言語」ということでビスケットの名前を出していただいています.ありがたいことです.
しかし,国産であることはあまり重要ではありません.他にも日本人が作ったよいツールは沢山ありますから.それよりも僕が重要だと思っているのは,開発者が現場に出てアップデートしている,ということです.それがどういうことなのかをお話しましょう.
授業やワークショップをやっていて,何か問題があったとします.たとえばある男の子が全然言うことを聞かなくて,その子に引きずられて進行が遅れてしまったとか,タブレットの操作に慣れていない子が数名いたので,スタッフが1人つきっきりになってしまったとか.
普通なら,その後の反省会でどういう進行をすればそのような問題を防げるか,いろいろな意見が出ることになります.よくあるパターンだと次回から説明が一言二言増えます.それが繰り返されると,進行している大人の声ばかり聞こえるワークショップになって,ワークショップが窮屈になって行きます.
ところが開発者がその現場にいると,全く違う解を提示できるのです.たとえば,言うことを聞かなかった理由は,男の子がまだ教えていない機能を面白半分に使ってみて,よくわからなくなって混乱したのだとしましょう.それに対して「教えていない機能は使わないでね」と言う代わりに,最初から使わない機能を表示させない,という方法が開発者ならできるわけです.
使い方を少しずつ覚えてゆくに従って,ボタンとか機能が一つづつ現れてくる.こうすると,話をちゃんと聞かない子供でも,落ちこぼれさせることなく進めてゆけます.
他にもありますよ.絵の色の透明度は最初の段階では触れなくして,使い方が全部わかって絵が凝れる段階でできるようにするとか.最初はメガネにぴったりと入れられないようにする(かならず一定の速度以上で動く)とか.
こうやって現場の反省をシステムに反映し,もちろん指導法にも反映し,作り上げてきたのが我々の今の指導法とシステムということです.どんどんトラブルが減っているので,今や幼稚園の年長さんでもほとんど混乱せずに教えられるようになりました.
その部分は今回の採択の概要のところに「少数の指導者で多数の児童に対応可能な教育モデルを開発」と書いていただいています.
この総務省の事業は,全国にプログラミングを指導できる「メンター」を育成する,ということが目的です.僕たちが直接子供に教えるのではなく,僕たちは教え方を教えて,それを受けた人たち(メンター)が子供たちに教えます.
僕はその人たちが教えている現場を大切にして,当然そこからのフィードバックがシステムに反映されます.つまり,メンターたちが教えにくいところはどこか,教える際に間違えやすい,セリフを言い忘れやすいところはどこか.その観察から,もちろんメンター育成方法へのフィードバックもあるでしょうが,それ以前の問題としてシステムを直しちゃって,苦労しなくても間違えにくくなる,となるわけです.
そうすると,ビスケット自身が改良されて低年齢でもすんなり教えられるようになったように.今度はいままで指導者研修に16時間必要だったのが,3時間くらいでも上手に教えられる人が育つ,ということになるわけです.なんか,小学校での授業に入ることも無理っぽくなくなってきますよね.
なので,国産かどうかなんて小さい話で,開発者が現場に出ているかどうかが重要なんですよ.